書評

やっぱウェブ上での書評というのは(ウェブに限らず、かもしれませんが)難しいようで……。


先日『国境を越える歴史認識』(ISBN:4130230530)についてあれこれ書きましたが、それに対して、川島氏が、自身のブログ(というかHPの日記)で、苦言を呈しております(ここの7月26日分)。鉾先がこのブログではない可能性もありますが、ただ苦言の内容自体はこのブログで書いたこと(というかid:almadaini氏とのやり取り、といった方がいいかもしれません)とピッタリです。


実際、almadaini氏の提示した疑問は、僕としてもややピントがズレている気がしたのですが、ただそういう疑問もあるかな、と思って、額面通りに応答しました。
ズレている原因は、almadaini氏も、川島氏もともに言っているように、「almadaini氏がこの本を読んでいない」で、「ウェブ上で切り貼りされたフレーズなどに反応している」からです。で、それを「始末が悪い」といわれてしまったわけです。


なのでこの件は、一義的には「本を読まずに批判したalmadaini氏が悪い」ということになるのでしょうが(もちろん、本を読んでも、almadaini氏がやはり意見を変えず、川島氏の主張を批判する可能性もあります。その場合は今度は著者とalmadaini氏との一騎打ちになるわけです)、「ウェブで切り貼りして断片的に引用したseanも悪い」ということにもなるのかもしれません。禍の種を撒いた、ということで。


ただ、そもそもブログなどで本を紹介する時には、「フレーズを切り貼り」するしかないわけです。全文を貼り付けることができない以上。
そして自分なりにまとめて批評するのが一般的ですが、まずそもそもこのまとめが、著者の意図とピッタリ合っているという保証はありません。
書評を見て著者が「オレが言いたいのは、そういうことじゃない」と文句を言うのは、実はありふれた光景です。


そしてさらに厄介なのは、その書評(だけ)を見た読者が、「いや、著者の主張はおかしい」と、「評者に」反論してくるこことです。

この時評者の対応としては、

1.著者に代わって再反論・弁明する。
2.「文句は著者に言ってくれ」と突き放す。

の二通りあります。評者は(というか、私は)ついつい知ったかぶりをして1を取ってしまいがちになるのですが、本来は2が、(少なくとも著者を尊重するなら)誠実な態度なのかもしれません。
もっといえば、そうそう手軽に書評などしないほうがいい、ということかもしれません。トンチンカンな書評が、著書や著者の価値を下げてしまうこともありえますし。


実は川島氏には、院生時代、あれこれお世話になったので(最近はご無沙汰しておりますが)、なおさら、ちょっと心が痛みます。
(ちなみに、駒場に移られるんですね。これで東京−札幌間移動の莫大な時間とお金が節約できて、基本的にはホッと一息、でしょうか。北大的には大きな痛手でしょうが)


なお、「これはalmadaini氏が悪いんだ!!ヤツのせいだ!!」ということを強調したいわけでは全くないので念のため。あくまでも、「書評の難しさ」一般について、です。