逆転現象

普段中国人留学生と話していて思いますが。

中国人学生の方が、日本人学生よりも、勉強はしてきています。時間だけなら、何倍も。

ただその勉強、ものすごく型にはまっているのですよね。要は教科書丸暗記。日本の教育が(評価はいろいろですが)重視する「自分の意見を持つ」みたいなの、あんまり考慮されないみたい。なので授業で、「この小説を読んで、「みんなはどういっているか」「どういう解釈だといわれているか」じゃなく、あなた自身がどう思うかを発表しなさい」といっても、その意味が分からない様子。「魯迅の「故郷」はこういう小説です」と、ネットから公式見解を拾ってくるわけです(ネットを見るのは禁止していないので、それはいいのですが)。「自分の意見」「自由な討論」とか、苦手というより、そもそも意味が分からないみたい。


ここまでなら、「日本の未来は明るい、中国の将来は暗い」となるのかもしれません。が、大学から出る、となると、とたんに両者の立場が逆転します。

日本の場合、流れに乗って就職し、流れに乗って仕事をする。学校ではいくら「自分の思い」「型にはまらない」とか偉そうなことをいっても、結局はみんながやってる就職に乗るのが普通。かりに「普通の就職」じゃなくても、たとえばNPOとかNGOとか海外留学とか、そういうのでもレールが引かれている。学生自身も、それに疑問を持っている様子はない。完全に、「世の中そういうもの」だと思っている。

それは日本がまさにそういう社会だからでしょう。よくいえばきちんとしている。悪くいえば「本当に型にはまらない」者を排除する。


一方中国はというと、もういつどこで何が起きてもおかしくない社会です。まさに荒波。天候などまったく読めない。
さぞかし大変だろうなあ、みんなそういう社会、本音では嫌なんじゃないのかなあ、と思って聞いてみると、案外そうでもないみたい。「日本の会社、あまりにきちんとしすぎていている」「残業とか信じられない。絶対にイヤ。」なので日本で働く気はない、という人が、けっこう多い。「向こうの会社、すぐクビになったり潰れたり、たいへんじゃない?」と聞いても、「そしたら次の会社に勤めればいいし」と、楽天的。


なんかこの逆転、面白いな、と思いまして。また日本の教育システムが、結局は「日本社会」というごく限られたサークルで生きていくことしか想定していないんだなあとも思います。が、それが悪いことなのかというと、そうでもないような気もするし。いずれにせよ、いろいろ考えさせられます。