面白く、やがて哀しき……

 「エスケイプ・フロム・アマゾン」(原題:「沖出亜馬遜」)という中国映画を見ました。

 いやはや、仰天。私も職業柄、そこそこ中国映画は見ていますが、ここまでのトンデモは初めてです。設定もトンデモ、ストーリーもトンデモ。いくら八一製作だからといって、こりゃあんまりだわいと、驚き、呆れ、やがて爽やかな気分になってきました。

 しかし一箇所、ちょっとしょんぼりするシーンが。主人公の解放軍兵士が敵(南米人)に捕まり、「お前は日本人か?」と聞かれたとたん、さも悔しそうな表情になり、「ぺっ」とつばを吐きかけるシーン。ふーん、中国人は、そんなに「日本人に見られる」のがイヤなのか、そんなに、日本人が嫌いなのか……

 僕は人間ができていないので、「嫌われている人間に優しくする」というのはとうていできそうにありません。

 これがもし、「自分が悪いことをした」のなら、まだ分かりますが、「自分の先祖が悪いことをした」ために、自分が嫌われている、のだとしたら、「それってどうなの?」と言いたくもなります。

 これがもし個人の問題だったら、つまり、ある人が、「先祖が悪いことをしたために、嫌われている」みたいなことがあったら、右も左も、ほとんどの思想形態を持った人は「そんなのはダメだ、不当だ」というでしょう。しかし、国家、国籍に話が膨らむと、そう簡単にはいかないようで……


 このシーンがなければ、純粋に「トンデモ映画No.1」に推したところでしょうが、このシーンを見た途端なんだか哀しくなってきて、ストーリーの破天荒さも吹き飛んでしまったのでした。