AU

 雑誌『世界』の「東アジア共同体特集」を図書館で読んでみました。いろんな考えがあるものです。

 でも姜尚中さんのはちょっと頷けませんね。けっこうファンですが、今回のは今一。
 小泉首相の「対米追従」を批判して、AU(アジア共同体)一辺倒で進んでいますが、いろんな意味で怖い。
 まずは、「中国と本当に一緒にやれるのか?」ということ。
 こないだの日本の選挙、自民・民主で政策にほとんど差がない中、唯一のはっきりとした差といえば、自民の「対米追従」と民主の「アジア重視」という違いでした。結果はご覧の通り。
 もちろん、「誰もそんなこと考えて投票してない」という批判もあるでしょうし、事実そうかもしれませんが、もし、この点が争点になっていたとしても、結果は同じ、あるいは、もっと差がついていた可能性もあります。
 日本人は、今でも、「中国か、アメリカか」だったら、ほとんどはアメリカを選ぶでしょう。
 で、それは、必ずしも「間違った選択」とは言えない。もう何度も何度も繰り返しますが、中国は「一党独裁」の国です。その国と一緒にやるということは、一党独裁を政治体制として認める、ということです。それははたしてアリなのか。

 もう一つ、「政治はともかく、まずは経済で一緒にやる」というものです。『世界』にも、共産党の御用学者朱建栄さんがこの線で書いていますね。
 でもこれこそ、共産党や大企業にとっては思う壺です。例えば労働者における国境の垣根を無くすと、

中国から安い労働力が大量に日本へ

労働力の供給過剰

日中すべての労働者が安く買い叩かれる

企業ウマー、ついでに国内の大量の余剰労働力を処理(ものすごい冷酷な書き方かもしれませんが)できて、共産党もウマー

もちろん、「中国の労働者を日本に入れるな!」というのは日本一国主義の、間違っても健全とは言えない考えではあります。しかし、ただでさえ雇用が不安定になってきており、「1%の雇用主と、99%のフリーター」状態になりつつある日本では、安価な労働力の大量流入は、完全に「トドメの一発」になるでしょう。今でも、企業人が、「日本人1人雇うカネで、中国人3人雇えますしね」とかいうのを聞きますし。


 アジアがEUのようにまとまれる時代は来るんでしょうかね。