ノルマ論

今年受け持ってる中国人院生さんの修論、テーマは「中国の大学における学生の就職サポートの現状と問題点」。

理論というよりは実地調査モノ。中国人学生はもちろん、大学のキャリア担当教職員、そして企業へのインタビューがメイン。なかなか面白いものになりそうです。

詳しい内容は論文の完成を待つとして、中国の大学の就職サポートの問題点はというと、突き詰めれば、「大学に課せられた学生の就職率のノルマ」が元凶、ということになりそうです。

これがあるから、大学はとにかく学生をどこかに就職させなければならない。ちょっと前に日本でも話題になった「被就職(就職させられる)」が、まさにこれです。大学側は、本当にいろいろな「脅し」を使って、ちょっとでも早く学生を就職させようとする。学生はじっくり企業を見極めて、なんて余裕はない。とにかく目の前の餌に食いつくしかない。それを見越して安く買い叩こうとする企業。この三者の息詰まる攻防が論文の核心になりそうです。ああ私も早く読みたい。


中国のノルマというと、悪い予感しかしません。古くは、農作物のノルマを課された方がそれを達成するために虚偽の数字を報告し、結果国全体が飢餓に苦しむ、ということもありました。また昨今も、各地方から上がってくるさまざまな数値が果たして実態を反映しているのか、というのもよくいわれることです。


ノルマというもの自体がよくないのだ、とは思いませんが(もしかしたらそうなのかもしれませんが)、とはいえ使い方によっては、完全な逆効果、ということにもなりかねない。

とくに、公的な機関・組織と、ノルマって、組み合わせ悪いんじゃないか、と思うです。そもそも公務員に、必要以上に頑張るインセンティブって、どう考えてもないんですよ。与えられた仕事をこなすだけ。それ以上は端的に持ち出し。公務員って、そもそもそういうものです。

それにノルマが課せられたら、「ノルマを数値的にクリアすること」だけに全精力を集中させることになる。それによって物事がよくなってるか悪くなってるかなど、どうでもいい。まさに数字だけを一人歩きさせるのです。


なのでノルマなどない方がいいのかそれでもあった方がまだマシなのか、この辺もわかりません。ちょっと調べようかと思ったら、「ノルマ論」的な研究書、出てないみたいですね。論文はあるだろうから、いろいろ探してみます。


なお、昨今の日本の大学にもいろんなノルマが降ってきていますが、正直、意味があるとは思えません。私が知る限りでも、その数値をクリアするためにどうやって○○しようかと、そればかり考えられているような気がしますが、はたして。