経済の善悪

香港の民主化運動について。

なぜ香港の若者は「中国嫌い」になったか――香港民主化運動に見る中国の弱点

ものすごく納得です。この運動に関する記事では、私が読んだ中ではピカイチでした。


で、考えるのですが、「香港市民の大陸に対する感情は急速に悪化してゆく。その原因は「中港融合」の副作用の拡大である。最も大きな問題は不動産価格の上昇であった」という点。

中でも若者への打撃が大きかった。香港では伝統的に、若いうちに小型のマンションを購入し、高く売り抜けて買い換えるのを繰り返すのが資産形成の定番ルートである。不動産が買えないと結婚できないという感覚を持つ男性も多い。しかし、今の値段では若者は最初の物件に手が出ない。香港中文大学の調査によれば、2010年に九龍の40平米弱のマンションを購入するのに、平均的な家庭の年収10年分が必要とされた。2002年には同じものを4年分の収入で購入できたという。不動産の暴騰により、多くの若者の人生設計が狂った。


なるほどこの通りだとして、でももしこれが香港の若者の「反中感情」の主要な原因だとすると、なかなか微妙になってきます。つまり、この「反中感情」、誰が悪いのか。中国政府? 香港政府? 中国人民?

経済政策の失敗はもちろん政府に責任を帰すべきものではあるのでしょう。が、その場合の「反政府」の意味合いは、「政府が民主化を弾圧する」などの時の「反政府」とは、相当変わってくるはずです。

不動産高騰の原因がなんなのか。大陸人が投資用に買い占めたためか、それともバブルなのか。私には分かりませんが、いずれにせよ、繰り返しですが、「民主化を弾圧する政府が悪い」と同じレベルで「誰々が悪い」と糾弾できるものではないような気がします。


もちろん、「なので香港の若者の怒りには正当性がない」とか「しょせんカネの問題だろ」とか貶めるつもりは全くないのですが、「カネの問題」になると、そう簡単に「悪者探し」ができるものではない、もしくは、できるものではないような空気になってしまうのが、難しいところだなあとは思うのです。


そういえば、89年の六四の時も、反政府運動が起こったのは、まずはインフレが原因だ、というのを読みました。その時も、私の中で、「な〜んだ」という気持ちが沸き起こったのを覚えています。軽い失望。

これも繰り返しですが、だからあの時の学生たちは動機が不純だったとかいうわけではなく、「な〜んだ」という気持ちが起こった私が悪い。が、うん、経済って、不思議ですね。