小説における教師像

ふだんあんまり小説は読まないのですが、たまには読みます。

ジャンルもバラバラですが、あえていえば、学園モノ、に惹かれますかねやっぱり。


で、その時引っかかるのは、教師像なんですねこれが。

「こんなのありえねー」とか突っ込み入れながら、読むわけです。

小説の中の教師像って、往々にして陳腐、もしくは極端なのが多いんですが(度を超した「熱血」か典型的なダメ教師か、とか)、たまにピピッと来るものがあるんですね。

最近読んだのでは、これ。


一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)


「おまえはサッカーやってたんだって? まあ、サッカーってツラしてんな。黄色い頭して」
 先生は、俺にはそんなことを言った。
 俺は自分でアシンメトリーのレイヤーっぽく切ってライト・オレンジを入れた髪を手ですいて首を縮めた。春高に合格した日に、初めて雑誌を見てやってみた。最初は徹底的にすいてジョギジョギ切ってブリーチして……。自分ではけっこうイケたと思ったけど、中学の教師や両親は俺の気が狂ったと思ったらしい。健ちゃんには「バカ」と言われた。たぶん合格した高校が違っていたら、ウチの家族の反応も違ったかもしれない。カット六回、カラーリング三回目で自ら作り上げた今のヘア、割と気にいっているけど、クラス担任にも嫌味言われたし、運動部は無理だろうな。おとなしめの茶髪が二、三人いるだけで、あとはみんな黒いよな。
「まあ、別にいいけどね」
 三輪先生はだるそうに言った。
「俺は髪のことはとやかく言わないよ。黄色いほうが人生楽しいなら、それでいいよ。俺は髪では苦労してるんだよ。パーマかけてんだろうとか、染めてんだろうとか。全部、生まれつきなんだよ。今でも言われるんだぜ、三輪クン、その髪どうにかならないのかって。ほっといてくれって感じだろ?」
「はあ……」
 俺は目をパチクリさせた。
「教員採用試験の時に短くしてストパーかけて黒く染めたんだよ。あまりに似合わなくてね、彼女にフラれてね、ま、そのせいだけじゃないけどな」
「はあ……」
「ウツになったねえ。鏡見る気しなくなったもんな」
 先生は真面目な顔でしゃべっている。
「どんな人生の重大事にも、外見を偽るもんじゃないって教訓になったな。おまえも今にわかるよ」
 この髪でいいと言っているのか悪いと言っているのか、わからなくなって、困って、また「はあ」と言うと、
「はあはあ言ってんじゃねえよ、気持ち悪ィだろ」
 三輪先生は、俺の頭を平手で叩いてニヤリとした。


この三輪先生、陸上部の顧問なのですが、オレ的には大ヒット。「黄色いほうが人生楽しいなら、それでいいよ。」って、いやーカコイイですね。映画だったら、間違いなく助演男優賞モノでしょう。


よし、木曜から始まる新学期も、このスタイルで乗り切ろうっと。