やりきれない想い
しかし文学のレポートを採点していると、ちょっと矛盾を感じることもあります。
良くできたレポートというのは、
「この小説はいついつの時代に書かれたものである」
↓
「この時代の社会状況はこうであり、作者はこういった状況におかれていた」
↓
「だから、こういった小説が書かれたのである」
と、まあこんな感じの論旨をたどります。
でもこれ、「文学」を論じてはいませんよね、実は。論じているのはどっちかというと「当時の社会状況」であり、それはむしろ歴史の分野です。実際、学生にも、「文学の授業だと思って受けたけど、実際には歴史の授業みたいだった」と言われたことがあります。
いっぽう、「この作品を読んで、とっても面白かった。とくに主人公のこういう行動が私は好きだ」的な素直な感想を記したようなものは、「これじゃ感想文だよ」として、切り捨てられる運命にあります。オレも、この手のは、良くて「可」です。
なので、本当に文学を読むのが好きな人は、文学研究には向かないのかもしれません。あるいは、「好きな作品は論じるな」という警句(なのか?)も、実は当たっているのかもしれません。