溜飲を下げる
ここんとこ、「読んで溜飲を下げる」ような本は、読まないようにしています。あんまり発展性がないような気がして(内田先生のとか。耳に/目に優しい分、まさに「溜飲を下げて」終わっちゃうのです)。
なので、この本も、敬遠しておりました。
最高学府はバカだらけ―全入時代の大学「崖っぷち」事情 (光文社新書)
- 作者: 石渡嶺司
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/09/01
- メディア: 新書
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タイトルだけ見て、「どーせ「こんなアホ学生がいます」「こんなヤバい大学があります」とか曝して笑いものにするような本だろ」と思い込んでまして。
ところが違う。たんに「大学生がバカなになったのは○○のせいだ」と何かに責任をなすりつけて終わり、なのではなく(そんな本はそれこそ巷に溢れかえっております。内田先生のとか)、そこからさらに真摯に分析を進めます。その分析や結論には、教員として「アイタタタ」と急所をグサリと突かれるものや、「それはどうかなあ」と思うものもありますが、それがかえって興味をそそられる。「オレの感じる不協和音は、何に由来するんだろう」と自分でも考えるきっかけになる。
特に教育問題というのは、往々にして「内部」対「外部」の対立になりがちです。内部(オレもその一員ですが)からの言説は「外部の人間は何も分かっていないくせに適当なこと言ってやがる」と不満を訴える方向に向かうものがほとんどだし、外部からのものは「教育はブラックボックスだ」「先生は世間知らずだ」というものがほとんど。そして各人はそれぞれの立場から、それぞれの溜飲を下げるようなものを選んで読んでいるわけで、議論の余地はなかなかない。
しかしちょっと考えれば分かるように、どちらかの言い分が100%正しい、ということはあり得ないわけです。内部にしか分からないことももちろんあるけど、内部からは分からない視点ももちろんある。この両者をバランスよく見渡す本って、なかなかなかったんですよ(たびたび言及しますが、内田先生の本は、内部言説の典型でしょう)。
そういう意味でも、この本はけっこうその突破口になるんじゃないかと期待できます。実は同じ作者の別の本も読んだのですがその感想はまた明日にでも。