功罪

今、学校でキャリア形成関係の仕事をいろいろしております。

インターンシップとか企画立案とかそういうやつ(のお手伝い)。

もちろん、学生に良かれ、と思ってしているわけです。が……



この本のアマゾンレビュー。

教師の世間知らず, 2007/2/9
By renon - レビューをすべて見る
フリーターやニートが増加した原因は、バブル崩壊以後10年間に渡り続いた「就職氷河期」である。この時期、企業は新たな採用を凍結し、正社員を非正規雇用に置き換えることでコストの削減を図ったため、多くの若者が失業し、不安定な就労を強いられることとなった。しかし著者は、そのような社会的背景があることを認識せず、「フリーターやニートが増えたのは、若者自身が就職を忌避しているためだ」と思い込み「職業観や勤労観を醸成すれば、そうした若者は減る」と確信した文体で本書を書き上げている。…これこそまさに「教師の世間知らず」ではないか?いくら子供に正社員になることを促したところで、その採用枠には上限がある。希望すれば誰でも正社員になれるという時代ではないのだ。実際に、これから社会に送り出される子供たちの何割かは正社員になることが出来ないだろう。著者は、その子供たちが受ける挫折感や絶望感を想像したことがあるだろうか?「正社員になった人は立派で、そうならなかった人は蔑視されても仕方がない」…そういう価値観を刷り込まれた子供たちは、自分がその立場に立たされた時、いったいどういう心境になるだろう?…著者が強く推奨する「職場体験」も、無批判に良いことだと決めつけているが果たしてそうだろうか?無論、プラスの経験になることもあるだろうが、受け入れる側の協力体制が整っていなければ、トラウマになることだってあり得るはずだ。むしろ運用次第では「毒にも薬にもなる」と心得ておいたほうが良いだろう。「なぜキャリア教育が必要か」その理由がここに書かれている通りなら、今すぐにでもやめるべきだ。

とかを読むと、う〜〜む、と考え込まされます。グサッと来ます。


そもそも教育とはこういう「引き裂かれた状況」にあります。ふだん学校では「これを学ぶことで○○がアップする」(○○は人間性だったり知識だったり)という理念のもとで教育を行い、マジメに勉強しない学生には「コラ、きちんと聞きなさい」とか叱るわけですが、しかし「じゃあ大学の授業を(経済的・能力的に)初めから聞けない人は、ダメな人間なのか?」と言われれば、全力で「ノー!」といわざるを得ないでしょう。


キャリア教育も同じ。最終的な目的は「学生を良き社会人にする」でしょうが、このレビュアーのように「良き社会人になれない者は、価値のない人間なのか?」と聞かれれば、これまた全力で「ノー!」と言わざるを得ません。


もちろんそこまで気にしていたら何にもできないよ、ではあります。ひとまずは正社員になることが多くの学生の目標である以上、そこに正社員=プラス、非正社員=マイナス、という価値観が忍び込むのは、ある程度までは避けられないことです。「正社員になってもなんなくてもどっちでもいいよ。好きにすれば?」という態度ではそもそもキャリア教育など成り立たないでしょうし(もちろん、キャリア教育などそもそも必要ない、それどころか悪の根元だ、という意見は、アリです。)。もちろん、そこで過度の幻想というか脅し(正社員になるとウハウハだ/非正社員はこんなにヒドイのだ、みたいな)は絶対に慎むべきですが、しかしそこにやはり何らかのアメをぶら下げなければ、教育自体成り立たないのもまた確かです。


どうなんでしょうね、この辺。強烈に悩むところであります。