たまには褒めたい

なのでたまには褒める書評を。


現代中国の中央・地方関係―広東省における地方分権と省指導者

現代中国の中央・地方関係―広東省における地方分権と省指導者


広東省といえば「独立王国」などとよくいわれ、中央に従わない地方の代表のようにいわれていますが、そんなことはない、少なくとも省レベルでは、中央に忠実に政策を実行してきた、「問題」はそれに従わないそれ以下(市、県...)や縦割りの各行政組織(電信局なら中央から省・市県の電信局)である...という内容。

ここから垣間見えるのは、省の「中間管理職」性とでもいえるものです。中央からは「この政策を実行しろ」と発破をかけられ、しかし市や県はそれに従わない、もたもたしているうちに痺れを切らした中央から無情の交代命令...

そんなに難しい資料(档案とか)を使わなくても(使っているのはふつうの新聞や資料集がほとんど)、きちんと調べれば、これくらいは分かる、という意味でも、大変参考になりました。


しかし、中国で、地方の市や県が中央政府に従わない、というのを、はたしてどう評価すべきか、という、新たな悩ましい問題にも突き当たることになります。

中央政府の一党支配体制や中央集権的国家体制を突き崩す、民主の萌芽、的な見方をすれば、「地方の不服従」は喜ばしいこと、といえるでしょう。しかし、いっぽう、近年の農村問題に代表されるように、地方の「無法地帯」性こそが、多くの貧しい農民工を生みだしている元凶、というのも、また確かです。

このあたりの「地方の多元性」をも、しっかり見極めなくてはならない、ということを気づかせてくれました。