良鉄釘にならず

銃後の中国社会―日中戦争下の総動員と農村

銃後の中国社会―日中戦争下の総動員と農村

「抗日戦において、中国地方農村社会では、民衆が、どれだけイヤイヤ徴兵されていたか」論。面白かった。一般向けを意識している(させられている)のか、こんだけの内容なのに引用されている資料が少ないのがやや不満ですが。


これまで、中国の対日戦争というと、「市民の抗日意識の高まり」みたいなのが、好意的に語られることが多かった。でも、都市部にすむ一部の知識人(そして彼らは、おそらく実際に兵士となることはない)はべつとして、一般市民、あるいは、「近代的・国民国家的国民」など思いもつかない農民たちにとって、「国のために、兵となって日本と闘う」ことに、これっぽっちも魅力などあるはずがありません。かくして、各地域に割り当てられた徴兵の「ノルマ」をめぐって、壮絶なやり取り・取引が行われるわけです。


この本自体の面白さに加え、この本の評価についても興味があります。つまり、中国などでは、こういう研究は、どう評価されるのか。同書自体が扱っているのは国民党支配地区なので、共産党は直接関わらないとしても、まあそんなに面白くはないんじゃないでしょうか。と推測。