怠け心にこの1冊

春のうららかな陽気の中、勉強などまるでやる気がなくなった、時に読むこの1冊。

パンと知識と解放と―19世紀イギリス労働者階級の自叙伝を読む

パンと知識と解放と―19世紀イギリス労働者階級の自叙伝を読む

その名の通り、「19世紀イギリス労働者階級の自叙伝」です。そう聞くと、なにやら悲惨な生涯を振り返る、的なものか、とお思いでしょうが(そしてそれは確かに間違ってはいないのですが)、ポイントは、「自叙伝」というところ。そう、執筆者たちは、労働者階級でありながら、つまり、金銭的・階層的にはまったく恵まれない−子供の頃、「教育」などというものとは無縁であった−人たちでありながら、苦労して文字の習得に努め、自伝を書けるまでになった人たち、について書かれているのです。


彼らは、もちろん、「自叙伝を書くために文字を習った」わけではありません。というかそもそも、自叙伝を書くことにも、なんら(とくに金銭的)モチベーションがあったわけではありません。しかし彼らは、貧困の中、文字を習い、自叙伝を書いた。それはまさにタイトル通り「パンと知識と解放と」のためであり、詳しくはぜひ本書を読んでいただきたいのですが、なんか、読むたびに、(著者の意図とはまったく異なる使い方なのでしょうが)ジーンと来るのですよ。


本来はそれでお金をもらっている(それだけではないにしろ)身でありながら、「なんか本読むのも飽きたなー」とかいってブラブラしている身にとって、なんかこう、「そんなことやってる場合じゃないぞ」と襟を正させられる本なのでした。でも絶版なんですよね。ぜひ復刻して欲しい1冊。