上海雑記

さて今回の上海は久しぶりでして、とはいっても高々2年ぶりなのですが、でも上海は、半年で風景ががらっと変わってしまうなど日常茶飯事で、実際今回も、完成・建築中問わず、高層ビル・マンションで溢れんばかりでありました。地下鉄やモノレール(っぽいの)も、なんだか増えてたし。しかしどの路線も、郊外にばかり延びていて、肝心の市内はあんまり便利になっていないのでいまいち。今回のホテルも、最寄りの地下鉄駅まで徒歩30分。行きはともかく、帰りは荷物を抱えているとけっこう堪えます。


と、ハード面は変化を続けているものの、ソフトの方はどうか、というと相変わらず。横入りするババアや、痰を吐き散らすオヤジも昔のまま。もし拳銃を手にしていたら、確実に撃ち殺していたであろう、ということが1日10回はありました。まったく、ちょっとお金を間違ったくらいでまるで万引きでもしたかのように罵りやがったコンビニのババアには、普段は物静かな僕もさすがに「うっせえババア」と、日本語で(しかも小声で)罵り返したものでした。


さてふと考えるのですが、今後、日中両国が順調に人的交流を増やし、そしてやがては(一部の人たちが夢想するように)お互いビザなど不要になり、好きなように行き来ができ、また働けるようになったとして、人々は日中どちらの「色」に染まるのだろう、と。

日本人は中国人より断然「礼儀正しい」人々です。まあこれは、日本人が「道徳的に上」とかなんとかいうよりも、日本人は周囲の目を異様に気にし、中国人は異様に気にしない、という点にあると思うのですが、それはともかく、日本にいる中国人は、今のところは、人前で痰を吐いたりはしません。少なくとも日本人のいる場所では、見事に「日本人化」します。店員に対して「ありがと」とかいうし。

一方、中国の日本人も、けっこう「中国人化」します。まあ中国で順番など守っていたらいつになったら買えるか/乗れるか分からないし、自己主張しなかったら自分が損するだけですから。

はたしてどっちが勝つのか。まあ個人的には、中国的社会で生きていくのはちょっと勘弁、ではあります。


まあ「人種」の壁というのはそうそう越えられるものではなく、いくら行き来が自由になり二世、三世が増えたとしても、結局は「人種ごとに」居住・生活することが圧倒的に多く、たとえば多人種が共存し「うまくいっている」といわれているシンガポールなんかは、実際にはきれいに住み分ける(しかもかなり強圧的な手段でもって)ことで摩擦を防いでいる、というのが実情です。もちろん、「だから悪い」とか「意味がない」というわけではないですが、いくら「人種なんて想像上のもので、なんの根拠もない」といったところで(そしていくらそれが正しいとしても)、やはり「(文化的な)差」というものは厳然としてあると思うのです。もちろん、「人種」=「文化」ではないし、個人的には、コギャルの格好をする黒人やすっかり中国人化した日本人というのも見てみたくはありますが、とはいえ安易に「融合」とかいうのもちょっと違うのではないか、と。


「文化/人種の差」を強調して他者(とされる人たち)を完全に拒絶するのでもなく、かといって「融合」という見果てぬ夢を追いかけるのでもない、その中間は、はたしてどこにあるのでしょうか。


あああのババアには、いまだに腹が立つ。