学校以外の選択肢

本来は合宿参加記を書いた方がいいのでしょうが、その前の日の出来事があまりに印象深いのでそちらから。


とあるド田舎の高校(校名はさすがに伏せます)に、再び模擬授業に行ってきました。
30分の授業を2回。いろんな大学や専門学校の先生が来ていて、学生は自由に選んで見たい授業を見る、というやつ。

1回目の授業は、「第一志望」の学生さんたちだったせいか、まあまあまじめに聞いてくれました。

2回目は、学級崩壊状態。誰一人聞いてくれませんでした、たぶん。


僕自身田舎出だからわかりますが、田舎の公立校というのは、上下の幅が凄まじいのです。僕がいた小中学校も、上は現役東大合格とまでは行かなくても、まあ旧帝大クラスに現役で入ったやつがいますが、下はヤクザさんの息子で、字もロクに読めない、なんてやつがいたもんでした。

んで、今回行った高校も、まさにそんな感じ。上は田舎の純朴な少年少女風でしたが、下は絵に描いたようなヤンキーどもで、完全に授業など放棄状態。「教師の話なんて死んでも聞かない」という固い決意のオーラを出しつつ、おしゃべりやマンガ読みに興じておりました。

これが、「最初は聞く気があったけど、途中でつまらなそうにし始めた」というなら僕の授業が悪いのでしょうが、最初からひと言も聞く気がない、では、ちょっともう手だてがありません。普段の授業も推して知るべし、です。


で、帰り道に考えたのですが、彼らにとって、学校、とくに義務教育ではない(義務教育が免罪されるわけではないですが)高校って、なんなんだろうと。
学校の授業において、彼らが得るものは、爪の先ほどもありません。
3年間学校でブラブラして、得るものといえば「高卒」の称号だけです。
もちろん、その称号が、彼らにとっても、また親にとっても、大事なんでしょう。「大学は無理でも、さすがに高校ぐらいは……」みたいに。

しかしそれにしては、あまりにも膨大なエネルギーと時間が、ほとんどムダに費やされます。
ツッパリ生徒は居たくもない聞きたくもない授業のために、ほぼ丸一日拘禁されます。
教師は、やってもムダな授業のために、多大な時間と神経を費やされます(そして少なくない給料を得ます)。
そして自治体は、このムダな作業に、莫大な金額を費やします。

どこをどう見ても、あまりにも不条理です。


彼らに、「高校に(学校に)行かなくてもよい」という選択肢を与えることはできないものでしょうか。今現在の教育に関する議論を見ても、やはり最終的には「落ちこぼれやチンピラでもなんとかして学校(的なもの)に行かせる」という方向性での議論が圧倒的多数です。もちろん、「学校へ行きたくないような落ちこぼれはどうぞ行かなくてけっこうです。こっちも経費が減って助かります。その代わりあとのことは知りませんよ」という「新自由主義的教育」への警戒、という側面があるのは分かるのですが、かといって「とにかく行かせりゃいい」というものでもないでしょう。むしろ学校から離れさせ、成長してある程度は自分の将来について考えられるようになったら学びなおさせる、みたいな方策を考える方がよっぽど現実的だと思うのですが。

もちろん、今だって、「行かなくてもいい」んです、いうまでもなく。それこそ義務教育ではないので。でも、「学校は行った方がいい」という空気がなんとなく醸成されている。理由はいろいろでしょうが、まあ「教育者の既得権益確保」という側面が強いのでしょうね。

最も簡単な方策は、学校を減らす、これに尽きるのでしょうが、これはそう簡単にはいかない、どころか非常に困難です。
どこも、「わかりました、じゃあうちの学校は潰すことにします」とは言い出せないでしょうからね。


死ぬほど疲れ切った一日でした。