ムラカミ事件に思う

 しかしムラカミ事件で、野党党首たちや識者が大まじめに「今度の事件は、「金がすべてだ」と煽ってきたコイズミ首相に責任がある」とコメントを出しているのは本当に目が点ですね。おいおい。そのうち「秋田の小学生殺害や、東京のエレベーター事故も、コイズミ首相のせい」とかマジで言い出しかねないですね。


 もちろん、多くの公的機関や審査機関を民営化してきた、それが遠因である、ということはいえなくはないでしょうが、しかしこういうコメントを出す人たちは、一般の人々が、コイズミさんがマネーゲームを煽れば(本当に煽っていれば、ですが)すぐさまそれに反応して狂奔するようなアホだと思っているのでしょうか。それが一点。


 もう一点は、例えば今日の高知新聞佐高信が「ムラカミには金儲けだけで理念がなかった」といっている点。僕は経済にはド素人ですが、しかし資本主義って、そういうもんなんじゃないんですかね。つまり、イデオロギーを振りかざすのではなく、経済という観点で、世の中を支配する。一見強突張りの世の中のようですが、しかし、貧しい人たちに、理屈ではなく、とりあえず経済的な援助を行う、みたいな例を考えると、そんなに悪い考えだとも思われない(そもそも「貧しい人がいる」というのが、資本主義の悪いところだ、というのはあるかもしれませんが)。文革期の中国みたいに、理屈やゴタクばかり並べて、経済的には悲惨な結果をもたらしたのを考えても、「下手な理念よりは金儲け」というのは、むしろイデオロギーに支配されてきた時代・国からの発展形、といえなくもない、というかそう思っています。少なくとも、「佐高の理念(があるとすれば、ですが)よりは、村上の金儲けの方が、世の中には寄与している」というのは無条件でいえるんじゃないでしょうかね。


 金儲けがダメ、というなら、「一人が持てる資産は何億まで。それ以上は没収」とか決めるしかないでしょう。まあ僕も、今度の事件で「ムラカミザマミロ」という気持ちがゼロとはいえませんが、というかかなりありますが、しかしそれはあくまで、あまり大々的には表明しない方がいいルサンチマン。いい大人たち、それも地位のある大人たちが、あんまりこういうこといわないほうがいいんでない、と思うのでした。


【追加】
どうも今回違和感を感じるのは、ムラカミ氏が「法を破った」ことからどんどん遡及して、彼が法を破るまでの物語が構築されていっていることですね。たとえば秋田の小学生殺しの彼女なんかが、「子供の頃から風呂にも入らず、みんなに嫌われていて……」みたいに「生来の犯罪者」に仕立てられていくのと同種の不気味さを感じます。「普通の人が犯罪を犯す(犯罪者にされる)」というのに、耐えられないんでしょうかね。特にムラカミ氏のなんか、少なくとも貧乏人の僕には、「へーこんなのが犯罪になっちゃうんだ」というものですし、また共謀罪なんか、いつ犯罪者に仕立てられるか分かりません。もし僕が共謀罪で捕まったら、「seanは子供の頃から友達がおらず、いつも暗〜く一人で本を読んでいるような少年だった」みたいに「犯罪者物語」が作り上げられるんだろうなあ、と思っております。