地元の英雄

 一昨日、昨日と中村に行って来ました。今では合併で四万十市になってしまいましたが。う〜ん、この地名、微妙。

 まあいいや。で、僕は地方都市に行くとたいてい地元の歴史資料館・博物館に行きます。とくに歴史マニアでもないしむしろ歴史事項とか人名とか覚えるのは苦手な方ですが、でもなんか、好きなんですよね、ああいう物寂しい雰囲気が。

 中村のもしかり。市内を見下ろす高台の上に、お城を模して作ってあるので、なかなかに立派ですが、やはり中はやや寂しい。参観者も僕らだけでした。


 中村は幸徳秋水が一番の有名人ですかね。で、これまたいつも思うのは、こういう「地元の有名人」って、たいていは、幼い頃・若い頃に地元を捨てて飛び出して、余所で(たいていは東京で)一旗揚げて名を挙げる、という人が多いわけです。その場合、地元の人たちの気持ちって、複雑じゃないのかなあ、と思うんですね。例えば、高知の場合坂本龍馬。彼なんてまさに、地方のしがらみ(地位やらなにやら)などをすべて捨て去り、飛び出していったわけで、むしろ高知からすると「裏切り者」、とまではいかないでしょうが、少なくとも「高知の発展のために尽くした」とはとてもいえない(少なくとも生前は。むしろ死後、今に至るまで高知は龍馬にさんざんお世話になっているわけですが)。「新潟と田中角栄」のような幸せな関係ではまったくないわけです。地元を飛び出していった、そういう人物を「地元の有名人」としてあがめる、という微妙な「ねじれ」、地元の人たちの「複雑な感情」(まあ、そんなの持ってない人の方が大半でしょうが)を思うと、なんともいえず哀しい気分になるし、しかしその哀しさがクセになって、またついつい歴史資料館に足を運んでしまうのです。

 ちなみに秋水も16の時に上京しています。故郷を追われたとかではないから、まあいいのかな。

 そういえば、この手の問題でいつも話題に上るのが「松山と漱石」の関係ですね。「坊っちゃん」であれだけコケにされた松山が、漱石で売り出しているのは、「お前らにはプライドがないのか!」と、言ったりはしませんが。