ゴロゴロ

 さっきいろいろとブログを見てみると、更新されていない人が多いですね。いままでマメに更新していた人も、この週末は休んでいた人が多いみたい。ブログの更新を休む=実生活では忙しい、でしょうから、まあいろいろと活動していた方々が多いんでしょう。

 僕は、・・・実家から送られてきたマンガを読んで2日間が終わってしまいましたとさ。


 再び中国ネタ。「王斌余事件」も論壇のホットなテーマとなっております。
 王斌余は寧夏民工(肉体労働者)。雇い主の度重なる搾取にキレて大暴れ、4人殺害、1人重傷に追い込んだという、なんだか映画か小説のような事件です。

 しかしこの事件が報道されるやいなや、王斌余は中国に何千万といる民工の中でヒーローに祭り上げられていきます。興梠一郎『中国激流 13億のゆくえ』(岩波新書)でも詳細に述べられていますが、農村から都会に出てきた民工はロクな給料ももらえず(なんでも250年(25年ではないですよ!)働いて、ようやく都会の一般的なマンションが買えるぐらいだそうで)、そのなけなしの給料もたびたび不払いが起こる、という、まさに現代の奴隷といってもいいような人たちです。その民工の一人がついに立ち上がり、普段威張り腐っている雇い主たちをやっつけてくれたわけですから、これはそのほかの民工たちにとっては、拍手喝采ものでしょう。


 肉体労働を卑しいものと見るのは、まあ世界中、ある程度は普遍的に見られるものでしょうけど、特に中国ではこれが激しいような気がします。日本では、「肉体労働者はバカ」なんてのは、万が一心では思っていてもまず人前で言えるようなものではないですし、むしろ敬意を払う、例えば炎天下で道路工事をしているような方々や、高い足場を平気でひょいひょい歩いているような方々にたいして、「彼らのおかげで我々は生活できている」という思いを抱くことも少なくないと思うのですが、中国人の中流以上は基本的にこんな考えは皆無、「あいつらはバカで貧しいからこんな仕事しかできないんだ」と、完全に見下しているように思います。中国留学中、中国人の女子大生と街を歩いていた時のこと。彼女はとても知的かつ清楚な女性で、まあ「中国人らしくない」人でありました。で、たまたま僕らの進行方向に道路清掃員(こちらも若い女性でした)がいたのですが、その女子大生は普段見たこともないような怖い顔でその清掃員を怒鳴りつけ(たぶん「邪魔だ!!」とかいっていたんでしょう)たあと、再び僕にいつもの笑顔で、何事もなかったかのように話しかけてきたので、もうすっかり幻滅してしまったのを思い出しました(ああ、長い回想)。同じ人間扱いしていないというか。

 王斌余には1審で死刑判決が下りますが、彼は獄中で、「死刑にするならしてくれ、あの世に行ったらもう誰もオレを騙すことはないだろう」「ここ(監獄)の待遇のほうが工事現場よりよっぽどましだ」などと言っているとのこと。なんともいえず、暗い気分になる事件であります。


 ちなみに、論壇の知識人は、ほとんどみんな「王斌余は可哀想だが、殺したのは悪い、死刑は仕方がない」(あるいはそのバリエーションで「殺したのは悪いが、社会も悪い」というベクトルのもありますが)と論じていて、まあそれしかいえないんでしょうが、しかしこんな論説はほとんど無意味でしょう。食うや食わずで1日中働かされている民工に、「我慢して働き続けろ、そのうちいいことあるから」とでもいうんでしょうか。ウェブの紙面で、ビシッと決めたスーツ姿で微笑む写真付きでこんなコメントしている知識人たちには、いいようのない怒りがこみ上げてくるのでした。もちろん八つ当たり。